アレルギー対策

Allergy

現代の私たちは化学物質の恩恵を受け、生活は便利に衛生的になり、かつ食生活は量・質ともに満たされています。また医療進歩のおかげで寿命も延びるなど、私たちの衣食住と生活行動のスタイルは大きく変わりました。

しかし、その変化の中で環境由来といえる健康影響やアレルギーなどは増え続け、今や国民の2人に1人は何らかのアレルギーに罹患していると言われています。アレルギーや化学物質過敏症、シックハウス症候群に罹患した人やその家族は、日常的にそれぞれの問題に直面し、改善を図ろうとしています。私達は、自分がアレルギーなどの環境由来による健康影響を直接受けなくとも、他人ごとにしないことが大切です。

私達、群馬県クリーニング生活衛生同業組合は「洗濯」のプロとして持てる情報と技術で、少しでも環境由来の健康被害に対するリスク軽減を目指しています。ご家庭におけるアレルギー対策やクリーニング事業者との良好なコミュニケーションの一助となれば幸いです。

アレルギーとは

アレルギーとは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることを言います。人の体には、体の中に入ってきた細菌やウイルスなどの病原体から体を守る免疫という働きがあります。この免疫が食べ物や花粉、ホコリに含まれるダニなどに対して、過剰に反応してしまうのがアレルギー反応です。そして、その抗原のことをアレルゲンといいます。
アレルゲンとなるものは人により様々で、食物として口から入る経ロアレルゲン、呼吸により体内に入る吸入性アレルゲン、皮膚に触れて炎症を起こす接触性皮膚炎などがあります。
アレルギーには、気管支喘息(喘息)やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、薬剤アレルギー、食物アレルギー、ラテックスアレルギー、アナフィラキシーなどがあります。こうしたアレルギーの有症率が増加傾向にあります。本書では特に(生活)環境整備に重点を置いて記します。

対策のポイント

アレルギー治療の基本は、アレルギー発現の引き金となるアレルゲンを特定し、その除去または回避をすることになります。また、アレルギー反応を誘発させ、ないしは増悪させる感染、運動、心因、薬物、気候の変化などの誘因を回避し対応することも重要です。

具体的にはトータルケアとして薬物療法、食事療法、環境整備、鍛錬(運動)療法をバランスよく行うことが早期改善と予防に繋がります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、アトピー素因(アレルギーに対する遺伝的要因)のある人に起こる慢性的な皮膚の湿疹、皮膚炎のことをいいます。アトピー性皮膚炎になる人の大半は、乳幼児期に発症して、成人になる前に寛解(かんかい:症状が一時的あるいは継続的に軽減すること)することが大半です。最近は成人になっても寛解しない人や、成人になってから発症する人も増えてきています。

アトピー性皮膚炎の発症及び悪化の要因

ダニ、動物(ペット)の毛、フケ、唾液、細菌、カビ、花粉、食べ物(食品添加物を含む)、タバコ煙、掻破(そうは・掻くこと)、汗、汚れ、日光、乾燥、石けん、ボディソープ、シャンプー、リンス、化粧品、整髪料、衣類、ストレスなど

日常生活での工夫

衣類

  • 洗いやすくかぶれにくいものを着る
  • 肌を締めつけず、吸湿性や通気性の良いものを着る
  • 麻などざらざらした材質や羊毛、吸湿性の悪い化学繊維の衣類は肌を刺激したり静電気を帯びることで痒みを誘発するので、木綿など、柔らかい繊維の衣類を着る
  • 下着や衣類の襟首部分に配慮する
  • 衣類の内側の縫い目、金属部分などに注意する

洗濯

  • 洗剤はできれば合成洗剤の含有量の少ないものを使用する
  • 新しい衣類は、一度洗濯して使用する(蛍光糊のかぶれを防いだり、ホルムアルデヒドの除去ができる)
  • 洗濯のすすぎが不十分な場合、洗剤が皮膚を刺激するのですすぎを十分に行う
  • 柔軟仕上げ剤の使用には十分注意する
  • 外で干すときには、花粉が付着しないようにする
  • 洗濯機と部屋干しのカビ対策を十分にする

気管支喘息について

喘息も他のアレルギーと同様に、アレルギー反応だけが原因で起こるわけではありません。ただ、アレルギー性喘息の場合は、カビやダニ、ペットのフケなどの抗原が侵入した際のアレルギー反応により、気管支が収縮してしまうことが大きな要因の一つです。なお、小児気管支喘息(小児喘息)の多くは、アレルゲンの特定ができるアトピー型で、約9割は6歳までに発症すると言われています。

喘息を引き起こす・悪化させる主な要因

ダニ、動物(ペット)の毛、フケ、唾液、細菌、カビ、ウイルス、花粉、食べ物(食品添加物を含む)、薬物(アスピリンなど)、タバコの煙、花火や線香の煙、たさ火、大気汚染(二酸化硫黄、PM2.5、黄砂など)、室内空気汚染物質、ストレス、天候(台風が来る前や雨が降る前の気圧の変化など、秋冬の冷たい空気)など

生活環境の整備

治療は薬物治療ばかりではなく、生活環境を整えることも重要です。環境整備は発作を予防することができる大切な要素です。アレルギーを引き起こす原因となるものは病状によってそれぞれ異なりますが、特にダニは喘息の悪化に強く関わるため、これらの少ない環境作りを目指すことが大切です。しかし、無理をして環境整備を進めると長続きしなくなるので、出来るところから無理なく始めることが重要です。

環境由来のアレルゲン対策

効果的なダニ・カビ・ホコリ・ハウスダスト対策のポイント

  • 換気(空気の入れ替え)
  • 室内を適温適湿に保つ
  • 結露の防止・・・洗濯物の部屋干しの工夫
  • 掃除の励行・・・掃除機はこまめにかける、カーテンは洗い、ブラインドは拭く
  • ぬいぐるみを捨てる、手放せないものはこまめに洗う
  • じゅうたんやカーペットよりフローリングの方が対策には良い
  • マットレスよりもスノコのベッドの方が対策には良い
  • マットレスを使用する場合、日に当てたり掃除機をかける
  • 高密度繊維の防ダニカバーや防ダニ布団も効果的である
  • ベッドやシーツ、カバー類などはこまめに取り替える
  • 布団は丸洗いできるものにし、定期的にクリーニングに出す
  • 布団を干し、掃除機を1m2当たり20秒以上かける(花粉・梅雨時期は布団乾燥機でも可)

洗濯と環境アレルギー対策

衣類による皮膚障害の代表的なものとして、接触性皮膚障害があります。これは、左右対称に誘発されることが多く、特にアレルギー性接触皮膚炎においては、原因となるアレルゲンを含む衣類の装着を中止しなければ、症状が全身へ拡大して慢性化することもあります。
症状が出た場合はすぐに専門の医師に相談することが大切です。衣類による接触性皮膚炎は、繊維や布が皮膚に接する際の物理的な刺激によって起きます。
繰り返し摩擦が起きたり、着用時の締め付けなどの圧迫があると皮膚炎が生じやすくなります。
また、衣類に含まれる化学物質が原因となり、接触性皮膚炎が起きるケースがあります。衣類には染料をはじめ、樹脂加工、漂白剤、柔軟剤などの仕上げ加工剤、防菌防カビ剤、防虫剤、ドライクリーニング溶剤や洗剤など、様々な化学物質が使用されています。それらは繊維や布地に残留し、身体に直接的に作用して、接触性皮膚炎を起こすこともあります。
さらに、体内に抗体が出来ると低濃度であっても、特定の化学物質に対して強く感作し、アレルギー症状を引き起こす場合があるので注意が必要です。アレルギー症状を防止する観点から、日常から化学物質を正しく理解し、不用意に接触したり暴露されたりしないように気をつける事が大切です。

寝具とアレルギー

布団やまくらなどの寝具は温度、湿度、フケなどの餌というダニの繁殖に適した条件が整いやすく、ダニの温床になりやすいためアレルギーへの影響は大きいと言えます。ダニアレルゲン汚染減少の手段として、布団への掃除機がけや丸洗いという方法が提唱されています。また、布団からのダニアレルゲン除去には、家庭で行う場合とクリーニング業者に依頼する場合があります。防ダニの観点で考えた場合、肌にやさしい綿などの天然素材の布団は、化学繊維の布団に比べてダニが繁殖しやすいといえます。一方、布団カバーなどの繊維を高密度にした場合、吸湿性がないために肌への不快感があります。また、薬剤による抗ダニ加工を施した場合、使用される薬剤による健康への悪影響も考えられます。抗ダニ寝具、アトピー対策を施した寝具であっても、洗濯や日干し、掃除機がけなどの手入れを怠ると、その効果は低くなります。

日干しや乾燥機の使用はダニを殺す(ダニは50℃程度以上になると生きていけません)一定の効果はありますが、ダニの死骸や、ダニが生きている時に排泄した糞の除去には全く役に立ちません。クリーニング業者による機械式布団の丸洗いは、布団からのダニ除去に手軽で効果的です。しかし、業者によってその除去効果に差がみられます。洗浄方法などを問い合わせるのも良いでしょう。

洗濯機と部屋干しとクリーニング

全てのカビはアレルゲンとなる

カビが原因となる病気には大きく分けるとアレルギー・感染症・中毒症の3つがあります。カビを吸い込んだり接触することで起こるのがアレルギーです。カビの生える対象が人になれば感染症です。食品に毒を作る種類のかびが生え、それを食べれば中毒症です。全てのカビはアレルゲン(アレルギーを誘引する物質)となり得ます。カビが原因となるアレルギーには、気管支喘息、過敏性肺炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などがあります。アレルギーは、体質が大きく影響しますが、現在では日本人の2人に1人が何らかのアレルギーを持っていると言われています。

意外!衣類を清潔にするはずの洗濯機もカビの巣窟に

1.洗濯後は洗濯機のふたを開けて内部を出来るだけ乾燥させる

2.カビの栄養となる洗剤の使い過ぎに注意する

3.洗濯機用洗剤(カビ取り剤)で洗浄する場合にはカビの最も多い洗濯槽の上部が浸るようにいっぱいまで水を張る

天候を選ばないお手軽な部屋干しにも、要注意!

部屋干しをすると洗濯物から嫌な臭いを感じる事があります。多くの場合その原因は部屋干しの衣服についている菌です。 25℃前後の室温で濡れた(水分のある)状態が長時間続くと、洗濯しても落としきれなかった汚れが原因となり、洗濯物にもともとついていた少数の菌が増殖して臭いを放ちます。ある調査では、一般家庭の8割以上で部屋干しが行われており、その6割以上がこの臭いに不満を持っているとの事です。

臭い対策としては洗濯物に付着する菌を減らしたり、増殖を抑えたりする事で部屋干し臭を抑えることが出来ます。除菌剤や抗菌効果のある洗剤・漂白剤・柔軟剤などの使用は効果的です。しかし、洗剤はもとより柔軟剤などもアレルゲンとなる可能性があるので注意が必要です。
また、洗濯物を早く乾かす工夫も大切です。洗濯物をアーチ状に干すと空気の通りが良くなって乾きやすくなります。部屋干しの場合、洗濯物に扇風機やエアコンの風を当てるのも効果的です。

やっぱり!頼りになるのがクリーニング屋

おしゃれ着やフォーマル着、ビジネススーツなどドライ推奨マークの衣類は家庭では洗いにくいですが、衛生的に保つためには洗わなければなりません。しかし、アトピー性皮膚炎など肌に悩みを持つ方は、ドライクリーニングは控えたいと思っているかもしれませんね。そこでお勧めなのがクリーニング屋の上手な活用です。実はクリーニング屋のクリーニング方法はドライクリーニングだけではありません。大きく分けてドライクリーニング、ランドリー、ウエットクリーニング、その他特殊クリーニングがあります。

公益財団法人全国生活衛生営業指導センタークリーニング師研修教本より

1.ドライクリーニングは揮発油の様な石油系溶剤などを使用し「水を使わす」洗う

2.ランドリーは石けんや洗剤とアルカリ剤を用いて機械洗いをする水洗い方法

3.ウエットクリーニングはJISL0001のクリーニング記号が表示された製品の他に次の製品が対象品となる

  • ドライクリーニング対象品であるが、水溶性汚れを除去する必要がある製品
  • ドライクリーニングが不可能な製品
  • 機械力を抑える必要がある製品
  • 表示等で家庭洗濯や商業用水洗いが指示されており、他のクリーニング方法と比較してウエットクリーニングが望ましい状態にある製品

なお、ウエットクリーニングは水溶性のダニアレルゲンの除去に適しています。あなたの衣類などの最適なクリーニング方法については、温度管理と素材に適した洗浄法のノウハウを持つクリーニング屋さんに相談するのも良いかもしれません。

著:群馬県クリーニング生活衛生同業組合
出典:家庭で対策!環境とアレルギー

PAGE
TOP